四方山話(遠州)

浜松、遠州地域においての「よもやま話」・・・事実に基づいて雑感をまとめていきたいと思います。

水道民営化よりもやるべきことがある!!

 山本遼太郎氏が市長選で使用した「行政区再編よりもやるべきことがある」のフレーズを借用して「水道民営化よりもやるべきことがある」と鈴木浜松市長に申し上げたい。

それは、浜松市には、水道事業に係わる緊急的かつ合理的に解決しなくてはならない課題があるからである。

1.県企業局からの押し売りで多量な水余りに
 まず、次のグラフをみて頂きたい。
 (データは静岡県水利用室「静岡県の水道の現況」(平成29年度版)から引用)

水道民営化よりもやるべきことがある!!



浜松市は、磐田市、袋井市、湖西市、森町とともに静岡県企業局が運営する「遠州広域水道」の一員になっている。グラフは、その4市1町全体の水道水の「重要予測」(青ライン)と「実際の水使用量(実績)」(橙ライン)を比較したものである。注目すべきは、この両ラインの乖離が年毎に拡大していくことである。

(1)浜松市・水道水の供給体制
 浜松市の水道水は自己水源と県水受水によって確保されている。
  自己水源 総量は225,779トン
   ①大原浄水場(秋葉ダム) 105,500トン
   ②常光浄水場(天竜川の伏流水) 35,683トン
   ③井戸水等   84,596トン

  県水の受水契約量 日量165,500トン
 
 自前の水量だけでは不足するので「遠州広域水道(静岡県運営)」の都田浄水場(都田川、天竜川)、於呂浄水場(天竜川)、寺谷浄水場(天竜川・太田川)から供給される水を購入している。

※浜松市以外の自治体は、自己水源としての井戸水は有するものの独自な浄水場はなく不足分は遠州広域水道から購入。

(2)県企業局の過大な水需要予測で多量な水余りに。
  静岡県企業局は、各自治体が「一日当たり」どの程度の水が必要としているかの需要予測を行い、それに見合う水源確保を図ってきた。・・・と言うと、結構なことではないかと思われるが、そこに何かしらの恣意性が入ると問題が深刻になる。

・・・実は、「遠州広域水道」においては、不合理な問題が内包されているのである。
天竜川左岸(東側)の「森町・太田川上流」に建設されている「太田川ダム」に係わる問題である。

「太田川ダム」についての経緯を簡単にまとめると・・・
①昭和49年の七夕豪雨による太田川氾濫に伴い、流域住民から「防災ダム」の建設要望の声が上がる。

②しかし、「防災ダム」だけでは、国からの補助金が少ない。増額させるには、利水面を加えた「多目的ダム」にしようということになったと言われている。

③「天竜川左岸」(東側)だけでは、利水といっても水量が少なすぎる。右岸の浜松市も仲間になってもらおうということに。

④そうは言うものの、浜松市は水不足ということはない。 県議会でも反対意見。→県の担当課長も一時「防災ダムのみ」にと答弁あり。・・・所詮、上級官庁にいつまでも抵抗しきれず、水余りにも拘わらず 「太田川ダム」からの県水(25100トン/日量)を受け入れることに。

⑤企業局としては、ダム取水計画と整合性を図るような需要予測をしなくてはならない。(それが、上グラフの青ライン)・・・遠州地域は将来的に水が必要になるとされ、右肩上がりの予測となった。

⑥グラフの橙ラインは、実際の水使用量(実績)を表す。青ライン(需要予測)と橙ライン(実使用量)の乖離が年毎に拡大している。水余りが増大しているのだ。・・・無理な計画であるから、水余りが拡大するのは必然的なこと。

 平成29年度で約17トンと秋葉ダム(日量10万トン取水)の約1.7倍分が余っていることになる。 

※グラフ中央部の平行ラインは、「太田川ダム」取水がない場合の給水能力を示す。(大まかなもの)・・・これでも水不足が起こらないことが理解できる。つまり、「太田川ダム取水計画」はムダな計画であったと断言できる。


2.空(カラ)料金の発生
(1)浜松市の水余り  (給水能力からみると13万トンの水余り)
 水が余っているからと言って喜んではいられない。県からの受水分については、契約量の基本料金分の支払い義務を負っているのである。

 浜松市の場合は、日量で16万5500トンの受水契約を締結・・・年間で6040万トンになる。基本料金が1トン33円なので、約20億円は(県水の使用があってもなくても)企業局に支払わなくてはならないのである。(尚、使用料金は1トン当たり11円)

 ちなみに、平成29年度の実使用量は約3300万トン(年間)で、未使用水量は約2740万トンであった。 この未使用量に33円を掛ければ空料金額が算出できることになる。

 そこで浜松市の「水需要予測」と「実際の使用量(実績)」はどうなっているか?
グラフで示すと下記の通りである。

水道民営化よりもやるべきことがある!!



 グラフの通り需要予測と実使用量の乖離が拡大し近年約7万トン近くの水余りが続いている。・・・平成29年度においては、給水能力(391,279トン)と比べると13万トンも余裕がでている。
※浜松市の「一日当たり最大水使用量」(実績)は260,489トン(平成29年度)

(2)浜松市の年間の空料金は約9億円、累積空料金額は100億円超にも。
前述したように、浜松市の場合は自己水源を保有しているので県水をどの程度使用するかは裁量の範囲であるが、毎年平均すると県水の使用割合は50%台(平成29年度は55%)になっている。・・・つまり、県との契約量の半分近くは使用されず余水として「基本料金」のみの支払いになっている。
 
 一般的には、契約量のなかで(水余りで)使用されないまま基本料金のみを支払うことを「空(カラ)料金」と称しているが、この額の推移は下記の表の通りである。 

単位:円
水道民営化よりもやるべきことがある!!



 浜松市の欄を下にみていくと、平成29年度は8.9億円にもなる。・・・これは、毎日、毎日244万円をドブに捨てているようなものである。

「太田川ダム」からの給水計画が始まった平成17年度からの累積額は100億円を超えてしまっている。

このまま放置すれば浜松市だけでも150億、200億円と積み上がっていくことになる。(静岡県企業局も15年後には給水計画の見直しを言っているが、そこまで待てない状況である)

 尚、「遠州広域水道」全体の累積額は約168億円と莫大なものなっている。平成29年度においては14.6憶円にもなり、一日当たり400万円もムダに捨てているのである。・・・これすべてわれわれの支払う水道料金から充当されている。

 
3.需要計画の見直しで水余り(空料金)の減量を!!
 太田川取水に伴う水道事業計画は平成31年度が完成年度になっている。この機会に需要計画を妥当なものにし、浜松市は県水受水の契約量の大幅減量を図るべきである。

 現在の契約量16万5500トン(日量)から8万トン前後減量しても浜松市の給水能力からみても水不足になるということはない。これが実現できれば年間で10億円近くの経費削減につながる。

鈴木浜松市長は静岡県と真正面に向き合って交渉すべきである。

 浜松市は、「水道民営化よりもやるべきことがある」のである。



こちらに続く  ・・・  https://enhama2019.hamazo.tv/e8419993.html


この記事へのコメント :
その通りだと思います。
太田ダムには利水のために水を貯めておく必要はなく、
ダム堤体の欠陥(36箇所の未修理ひび割れ)を正視すれば
水を溜めておいてはならないダムです(南海トラフの大地震に
このダムが耐えれる科学的保証はありません)。
地元民と漁協の怨嗟の的になっている濁水問題も含めて、根本的な解決策は水を抜くこと、とりあえずは最低水位に下げておくことですが、頭の硬直した県河川課と企業局は上記提案の
緊急性に気が付きません。
Posted by 岡本 尚 at 2019年04月15日 20:43
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    コメント(1)